「屋根が浮いてますよ」と訪問営業が来たら|その場で契約してはいけない3つの理由

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インターホン越しに「近くで工事をしていて、お宅の屋根が見えたのですが、浮いていますよ」と言われた。本当かもしれないし、嘘かもしれない。屋根の上は自分の目で確かめられないので、業者が帰ったあとも不安だけが残ります。この記事では、なぜその場で契約してはいけないのか、契約してしまった場合はどう巻き戻すのか、そして指摘が本当かどうかを安全に確かめる手順を、国民生活センターの公表資料をもとに整理します。

「近くで工事をしていて、お宅の屋根が見えた」——点検商法の典型トークの構造

まず、これがどれくらい起きていることなのかを押さえます。国民生活センターが2023年10月11日に公表した資料によると、屋根工事の点検商法に関する相談は2022年度に2,885件で、過去5年で最多でした。2018年度は923件でしたから、4年で約3倍に増えた計算です。しかも、契約当事者の8割超が60歳以上です。

同資料が示す典型的な流れは、次の3段階です。

  1. 「近所で工事の挨拶に来た」と訪問する
  2. 「屋根瓦がずれている、点検してあげる」と屋根に上がろうとする
  3. 点検後、「このままだと瓦が飛んで近所に迷惑がかかる」と不安を煽って契約させる

注目してほしいのは、このトークが「親切な挨拶」から始まり、「ご近所への迷惑」で締められている点です。あなたの警戒心を最初に解き、最後は「自分のためではなく周りのために早く決めなければ」と思わせる。断りにくさが構造として設計されているのです。玄関先で押し切られそうになったとしても、それはあなたが流されやすいからではありません。

その場で契約してはいけない3つの理由

理由1: 屋根の状態を、自分の目で確認できない

屋根は住まいの中で唯一と言っていいほど、住んでいる本人が状態を確かめられない場所です。「浮いている」という指摘が事実かどうか、その場で検証する手段があなたの側にありません。真偽を確かめられない情報だけを根拠に、数十万円から百万円級の契約を判断することになります。

理由2: 相場と比較できない

その場で出てくる金額は、1社の言い値です。同じ工事でも金額は業者によって差があり、比べる材料がなければ高いか安いかの判断はできません。外壁・屋根まわりの費用感については外壁塗装の費用相場と見積書の見方で整理していますが、いずれにせよ「比較対象ゼロで即決」は避けるべき条件がそろっています。

理由3: 不安の中で判断させられている

前述のとおり、点検商法は不安を煽って契約させる手口だと国民生活センターが指摘しています。つまり「不安なまま判断している」という状態そのものが、相手の狙いどおりの土俵です。判断の質を取り戻す方法はひとつだけ、その土俵から降りること。すなわち、その日は決めないことです。

屋根に登らせてはいけない——「自分で確かめられない報告」を増やさないため

「無料で点検だけでも」と言われると、断る理由がないように感じます。しかし、点検を許すことは「業者だけが見た屋根の状態」という、あなたには真偽を確かめようのない報告をもうひとつ増やすことです。典型的な手口では、この点検の後に不安を煽る言葉が続きます。国民生活センターは「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」のページで相談事例と件数を継続的に公表しており、消費者庁も悪質なリフォーム事業者への注意喚起を出しています。行政が繰り返し警告を出している類型だ、ということ自体が判断材料です。

点検が必要かどうかは、その訪問業者に確かめてもらう必要はありません。後述するとおり、利害関係のない第三者に依頼すれば足ります。玄関先では「点検は結構です。必要なら自分で業者を探します」で終わらせて構いません。

契約してしまった後の巻き戻し方——クーリング・オフの条件と手順

すでに契約してしまった方も、まだ打てる手があります。訪問販売で結んだ契約は、法定の契約書面を受け取った日から8日以内であれば、クーリング・オフ(無条件解除)ができます。通知は書面のほか、メールなどの電磁的記録でも可能です(消費者庁 特定商取引法ガイド)。手順としては、契約日・業者名・「契約を解除する」旨を書いて送り、送った記録を手元に残しておきます。

ただし例外があります。消費者の側から「契約したいので来てほしい」と自ら明確に要請して自宅で契約した場合は、クーリング・オフの対象外です(近畿経済産業局の相談事例より)。「必ず解除できる」とは言い切れないため、期限が迫っている場合や判断に迷う場合は、お住まいの自治体の消費生活センターなどの相談窓口に早めに相談してください。

本当に屋根が傷んでいるか確かめる安全な方法

指摘された内容が気になって放置できない、という方もいるはずです。それ自体は健全な感覚です。確かめる方法は、訪問してきた業者と利害関係のない第三者に見てもらうこと。もし屋根の傷みが事実なら、別の複数の業者も同じ箇所を指摘するはずです。逆に、誰も同じ指摘をしなければ、あの言葉の信頼性はそれまでだったということです。

第三者を自力で探す伝手がない場合は、加盟店を審査したうえで複数社を紹介する無料の一括見積もりサービスが使えます。訪問業者の「診断」に対する答え合わせとして使うのが、いちばん落ち着いた使い方です。

各サービスの違いや電話連絡への対処は一括見積もりサイト3社の比較記事にまとめています。また、契約を迫られて困っている・すでにお金を払ってしまったという段階なら、見積もりよりも先に自治体の消費生活センターへの相談を優先してください。

まとめ——不安を煽られた日こそ、決めるのは明日以降にする

点検商法への対処は、突き詰めれば一行です。「その場で決めない」。相談が2022年度だけで2,885件に上る手口は、いずれも即断・即決の場をつくることで成立しています。逆に言えば、一晩置いて第三者に確かめるだけで、この類型の失敗の大半は成立しなくなります。不安を煽られた日ほど、決めるのは明日以降。これだけ覚えて帰ってください。

次の一手

業者を家に上げてしまった、長く話を聞いてしまった、と落ち込む必要はありません。相手は断りにくい状況をつくる訓練を積んでいます。編集部にも「気づいたら契約書にサインしそうになっていた」という声は多く届きます。あなたの脇が甘かったのではなく、構造がそうできているのです。

今日やることは小さくて構いません。訪問業者の社名と言われた内容をメモに残す。契約してしまった人は、契約書面を受け取った日を確認する。そして「第三者の見積もりをいつ取るか」——それだけ、今日決めてください。屋根の状態は、あなたのペースで確かめられます。ほかの手口や断り方は訪問営業・トラブル対策の記事一覧で順に整理しています。

参考資料