副業でも開業届は出すべきか——青色申告のメリットと失業保険がもらえなくなるケース

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副業の収入が形になってきて「開業届」を調べ始めたら、「出すと失業保険がもらえなくなる」「出さないとまずい」と情報が割れていて、かえって手が止まってしまった。そんな状態でこのページを開いた方は少なくないはずです。調べるほど動けなくなるのは、失業保険や扶養のことまで見通して真剣に考えている証拠です。この記事では、国税庁などの一次情報をもとに、開業届を出すメリット・出さない選択が合理的なケース・判断の順番を整理します。

なお本記事は公表情報の整理です。失業保険の受給可否や税務の個別判断は、ハローワーク・税務署・専門家への確認をおすすめします。

開業届とは何か——「事業開始から1か月以内」の建前と実際

開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。事業の開始等の事実があった日から1か月以内に、納税地を管轄する税務署へ提出する書類で、e-Taxでの提出もできます(国税庁)。

一方で、提出が遅れた場合の罰則は基本的にありません(国税庁タックスアンサーNo.2090)。「1か月以内」という期限はありますが、遅れてから提出すること自体は可能です。つまり「出し忘れたからもう手遅れ」ということはありません。

ここで押さえておきたいのは、開業届と納税の義務は別の話だという点です。開業届を出していなくても、副業の所得が年20万円を超えれば所得税の確定申告が必要です。さらに「20万円以下なら申告不要」は所得税だけの特例で、住民税にはこの特例がなく、20万円以下でも市区町村への住民税申告は必要です(freee・弥生)。

出すメリット——青色申告・屋号・経費の説明力

開業届を出す最大の実利は、青色申告への道が開けることです。青色申告特別控除は、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添えて期限内に申告すると55万円、加えてe-Taxでの申告または電子帳簿保存を行うと65万円が所得から控除されます。要件を満たさない場合の控除は最大10万円です(国税庁タックスアンサーNo.2072)。

注意したいのは、青色申告をするには開業届とは別に「青色申告承認申請書」の提出が必要なことです。期限は、青色申告をしようとする年の3月15日まで。その年の1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内です(国税庁タックスアンサーNo.2070)。開業届だけ出しても青色申告にはならないため、使うなら2枚セットで考えます。

このほか、開業届には屋号を記載でき、事業としての形を整えられること、事業の開始を税務署に届け出ていることで経費の説明がしやすくなることも挙げられます。青色申告の控除が手取りにどれくらい効くかは、会社員とフリーランスの手取りシミュレーションで数字を使って整理しています。

出すデメリット——失業給付が受けられなくなるケース・扶養への影響

失業保険(基本手当)は、「就職する意思と能力があり、求職活動をしている失業状態」であることが受給の前提です。開業届を出して事業を始めている人は、収入の大小にかかわらず失業状態とは認められず、基本手当は原則として受給できません(弥生)。

会社員の副業で現実的に問題になるのは、次の場面です。いま開業届を出して事業を続けたまま将来会社を辞めた場合、「事業を営んでいる人」として基本手当を受け取れない可能性がある、という点です。退職の予定が少しでも視野にあるなら、ここは出す前に確認しておきたいポイントです。

ただし2022年7月1日以降、事業を開始した人がその事業を廃業した場合に、事業を行っていた期間(最大3年)を基本手当の受給期間に算入しない特例が設けられました。これにより受給期間は最長4年となり、退職後に開業し、うまくいかず廃業した場合でも、廃業後に基本手当を受給できる可能性があります(弥生・マネーフォワード)。

誤解のないように書き添えると、この特例は「基本手当をもらいながら開業してよい」という制度ではありません。事業を始めているのに開業届を出さず基本手当を受給し続けると不正受給にあたり、受給額の返還に加えて最大2倍の納付命令、いわゆる「3倍返し」などの重いペナルティの対象になります(退職コンシェルジュ)。なお、受給中であっても、待期期間7日(自己都合退職の場合はさらに給付制限期間)を経過した後の開業であれば、再就職手当の対象になり得ます(freee)。どのケースにあたるかは状況によって変わるため、開業届を出す前に必ずハローワークへ確認してください。

もうひとつ、家族の健康保険の扶養に入っている方は注意が必要です。扶養の認定基準は加入している健康保険組合ごとに異なるため、開業届の提出や事業収入が認定にどう影響するかは一律には言えません。事前に加入先へ確認しておくのが確実です。

開業届を出すと会社にバレるのか

開業届は税務署に対する届出であり、提出したことが勤務先へ通知される制度はありません。副業が会社に知られる典型的な経路は、住民税・社会保険・人づて・SNSの4つで、開業届そのものとは別の経路です。

とはいえ、「開業届を出さなければ安全」でも「出しても絶対に知られない」でもありません。住民税の徴収方法など、経路ごとの仕組みと対策は副業が会社にバレる4つの経路で整理していますので、開業届の判断とあわせて確認してください。

判断チャート——あなたは出すべきか、まだ出さなくていいか

上から順に、自分にあてはまるものを確かめてください。

  1. 近いうちに退職して失業保険を受給する可能性がある——出す前にハローワークへ確認を。受給資格に直結するため、ここが最優先です。
  2. 家族の健康保険の扶養に入っている——加入先の健康保険組合に認定基準を確認してから判断します。
  3. 副業の所得が育っていて、青色申告の控除を使いたい——出す実利が大きいケースです。青色申告承認申請書の期限(その年の3月15日、または開業日から2か月以内)から逆算して動きます。
  4. まだ売上がない、またはごく小さい——急ぐ必要はありません。提出が遅れても罰則は基本的にない一方、青色申告を使いたくなったときの申請期限だけは頭に入れておきます。

出すと決めたら——書類を5分で作る方法

作り方は大きく3つあります。国税庁サイトから様式を入手して手書きし税務署へ持参・郵送する方法、e-Taxで提出する方法、そして無料の開業書類作成サービスを使う方法です。

無料の作成サービス(開業freeeなど)は、画面の質問に答えていくだけで、開業届と青色申告承認申請書をまとめて作成できます(freee)。ここまで見てきたとおり、青色申告の実利を取るには申請書の出し忘れが致命的になるため、2枚を同時に作れる点で、手書きで税務署に出向くより速く、抜けも防げます。

次の一手

開業届をまだ出していないことに、後ろめたさを感じる必要はありません。提出が遅れても罰則は基本的になく、ここで立ち止まっているのは、失業保険や扶養への影響まで考えられている証拠です。

今日やることは2つで十分です。ひとつは、上の判断チャートで自分が「失業保険・扶養に関係があるか」を確かめること。関係があるなら、確認先はハローワークと加入先の健康保険組合です。もうひとつは、青色申告を使うつもりなら、申請期限(その年の3月15日、または開業日から2か月以内)をカレンダーに入れることです。

出すか出さないかは、今日決めなくて構いません。ただ、「いつ決めるか」だけは今日決めておきましょう。

参考資料

  • 国税庁「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
  • 国税庁タックスアンサーNo.2090「新たに事業を始めたときの届出など」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm
  • 国税庁タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
  • 国税庁タックスアンサーNo.2072「青色申告特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
  • 弥生「開業届を出すと失業保険はもらえない?」 https://www.yayoi-kk.co.jp/kigyo/oyakudachi/kaigyotodoke-shitsugyohoken/
  • マネーフォワード クラウド会社設立(失業保険と開業の特例) https://biz.moneyforward.com/establish/basic/67053/
  • freee「起業・開業と失業保険」 https://www.freee.co.jp/kb/kb-launch/entrepreneurship-and-unemployment-insurance/
  • freee「副業の20万円ルール」 https://www.freee.co.jp/kb/kb-fukugyou/side-job-20-fukugyo/
  • 弥生「副業所得が20万円以下の場合の申告」 https://www.yayoi-kk.co.jp/shinkoku/oyakudachi/fukugyo-20manijou/
  • 退職コンシェルジュ(失業保険の不正受給ペナルティ) https://www.taishoku-concierge.jp/contents/%E9%80%80%E8%81%B7%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/4121/
  • freee「開業の基礎知識」 https://www.freee.co.jp/kb/kb-kaigyou/basic-knowledge/