「田舎の実家、売れない」は本当か——売れない空き家の5つの出口
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「うちの実家なんて、誰も欲しがらない」。相続した実家を前に、そう口に出すのもどこか恥ずかしくて、誰にも相談できずにいませんか。編集部にも「もう詰んでいる気がする」という声が届きます。けれど、同じ悩みを抱える空き家は全国に約900万戸あります。あなたの実家だけが特別にダメなわけではありません。そして「手放す方法がひとつもない」という空き家は、実はそれほど多くないのです。この記事では、売れないと思われがちな空き家の5つの出口を、費用や注意点も含めて紹介します。
「売れない」の中身を分解する
まず整理したいのは、「売れない」には2種類あるということです。ひとつは「買いたい人がまったくいない」、もうひとつは「思っていた価格では買い手がつかない」。この2つはまったく別の問題です。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家は約900万戸で過去最高になりました。家が余っている時代であることは事実です。それでも、価格や条件しだいで買い手が見つかる物件は少なくありません。つまり「売れない」の多くは、実際には「親が建てたときの値段では売れない」「近所の相場観では売れない」という価格の問題なのです。
価格の問題なら、打つ手はあります。そして仮に本当に買い手がゼロでも、売る以外の出口が残されています。「もう詰んだ」と感じていた方ほど、選択肢の多さに驚かれるはずです。順番に見ていきましょう。
出口① まず相場を知る——複数社への査定依頼
最初の一歩は、いまの実家に値段がつくのかどうかを確かめることです。方法はシンプルで、不動産会社に査定(物件がいくらで売れそうかの見積もり)を依頼します。このとき必ず複数社に頼んでください。1社だけでは、その会社の得意・不得意に結果が左右されるからです。
「田舎の物件は相手にされないのでは」と心配する人が多いのですが、地方や郊外の物件を扱う会社、遠方の物件でも机上査定(現地に行かず資料で見積もる方法)に対応する会社はあります。無料で依頼できるのが一般的です。
査定の結果、想像より低い金額が出るかもしれません。「値段がつかない」と言われる可能性もあります。それは恥ずかしいことではありませんし、あなたの家だけの話でもありません。それでも、この結果には大きな意味があります。現実の数字がわかって初めて、「その金額で売るか」「別の出口を探すか」を比べられるようになるからです。思い込みのまま何年も放置することが、いちばん高くつきます。
出口② 空き家バンクに登録する
空き家バンクとは、自治体が運営する「空き家を売りたい・貸したい人」と「買いたい・借りたい人」をつなぐ制度です。多くの自治体が参加しており、登録は基本的に無料です。実家のある市町村の窓口やホームページで確認できます。
不動産会社が扱いたがらない低価格の物件でも、空き家バンクなら掲載できるのが強みです。近年は地方移住や別荘、自分で直して住むDIY目的で、「200万円以下で買える家」といった低価格帯の空き家をあえて探す人もいます。不動産市場では値段がつきにくい家に、「安く手に入るなら欲しい」という別の需要が存在するのです。
ただし、空き家バンクは登録すればすぐ売れる仕組みではありません。買い手が現れるまで時間がかかることも多く、内見(購入希望者の見学)への対応も必要です。「急がないが、使ってくれる人に渡したい」という人に向いた出口です。
出口③ 訳あり物件の買取専門業者に売る
再建築不可(法律上、建て替えができない土地)や老朽化が激しい家など、通常の仲介では売りにくい物件を、業者が直接買い取る方法があります。買い手を探すのではなく、業者自身が買うため、条件が合えば確実に、しかも早く手放せます。
デメリットは価格です。買取は市場相場の6〜8割程度になるのが一般的で、条件の悪い物件ではさらに低くなることもあります。それでも、「安くても確実に手放せる」ことには価値があります。売れないまま固定資産税と管理費を払い続ける、いわゆる負動産(持っているだけで負担になる不動産)の状態と比べて判断してください。買取と仲介の違いは空き家の買取と仲介、どっちが得?で詳しく解説しています。
出口④ 隣の土地の所有者に打診する
見落とされがちですが、有力な出口です。市場では値段がつかない土地でも、隣に住む人にとってだけは価値が高いことがあります。庭を広げたい、駐車場が欲しい、子ども世帯の家を建てたい——隣地だからこそ生まれる需要です。
方法は、手紙や訪問で「この土地を買いませんか」と声をかけるだけです。もちろん断られることもありますが、費用はほぼかかりません。話がまとまったら、契約や登記は不動産会社や司法書士(登記の専門家)に依頼すれば安全に進められます。
出口⑤ 相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう
2023年4月27日に始まった、相続や遺贈(遺言による譲り受け)で取得した土地を国に引き取ってもらう制度です。売る相手がいなくても手放せる、最後の出口といえます。
ただし、条件は厳しめです。まず、建物がある土地は対象外です。実家が建ったままでは使えないため、解体が前提になります。解体費の目安は解体費用の相場と補助金の探し方を参考にしてください。さらに、境界が不明確な土地や管理に過大な費用がかかる土地なども引き取ってもらえません。
費用もかかります。申請時に審査手数料が土地一筆あたり14,000円、承認された場合は負担金が原則20万円(土地の条件によって加算あり)必要です。「お金を払ってでも土地を手放したい」場合の制度だと理解してください。詳しい要件は法務省のページで確認できます。
「持ち続けるコスト」と比べて判断する
5つの出口はどれも、多かれ少なかれ「思ったより安い」「お金がかかる」という痛みを伴います。この痛みの前で、多くの方が同じように立ち止まります。そこで判断の物差しになるのが、持ち続けた場合の年間コストです。一度、次の項目を書き出してみてください。
- 固定資産税(毎年の納税通知書で確認できます)
- 火災保険料や光熱費の基本料金など、維持にかかる固定費
- 管理のための帰省交通費と、そこに使う時間
- 庭木の剪定や草刈りなど、管理を外注する場合の費用
さらに、放置して管理不全と判断されれば、行政から指導を受けたり税負担が重くなったりするリスクもあります。年間コストに10年をかけた金額と、いま手放した場合の損得を並べてみると、「安くても手放す」という選択が合理的に見えてくることは珍しくありません。
次の一手
出口は5つありますが、どれを選ぶにも共通する出発点はひとつです。まず複数の不動産会社に査定を頼み、実家の現在地を数字で知ること。値段がつくなら売却や空き家バンクへ、つかないなら買取・隣地・国庫帰属へと、比べる土台ができます。ここまで読んでも、すぐには動けない——そう感じたとしても構いません。今日すべてを決める必要はないのです。ただ、「いつ査定を頼むか」だけは今日決めてください。無料でできるこの小さな一歩が、「うちだけがダメだ」という思い込みと、ひとりで抱え込む状態から抜け出す入口になります。相続の手続きがまだ途中の方は、先に実家を相続したら最初にやること5つから確認してください。
参考資料
- 法務省「相続土地国庫帰属制度について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」