個人事業主はインボイスに登録すべき?取引先の種類別の判断基準と消費税の負担額【2026年10月時点】
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取引先から「インボイスの登録番号を教えてください」と聞かれた。登録すれば消費税の申告と納税が始まり、しなければ取引先に迷惑をかけるかもしれない。どちらを選んでも損をしそうで、ずっと決められずにいる方は少なくありません。決められないのは、あなたが怠けているからではなく、判断に必要な条件が取引先ごとに違うからです。
先送りしても、取引先の仕入税額控除の割合は2026年10月から下がり始めています。この記事では、取引先の種類別に「登録が必要な相手」を切り分け、売上別の消費税負担を式つきの計算表で示します。
登録が要るかどうかは、取引先に本則課税の課税事業者がいるかで決まります。消費者や免税事業者、簡易課税などの取引先だけなら、登録は必須ではありません。
- 2割特例は個人事業者の場合、令和8年分(2026年分)の申告が最後です。令和9・10年分は3割特例になります。
- 登録しない場合、取引先の仕入税額控除は2026年10月から70%まで認められます(経過措置)。
- 今日やることは、主な取引先が課税事業者か、簡易課税かを確認することだけです。
取引先の確認が済んだら、登録後に必要になる請求書への登録番号の記載や消費税の申告まで、帳簿づけと一緒に整えておくと迷いが減ります。無料の確定申告自動化ソフト マネーフォワード クラウド確定申告![]()
更新日:2026年10月19日。個人の税額や登録の要否は状況で変わるため、最終判断は税務署や税理士にご確認ください。
登録すると何が変わるのか
インボイス(適格請求書)を出すには登録が必要で、登録すると消費税の課税事業者になり、申告と納税の義務が生じます。登録は任意です(国税庁インボイス制度の概要)。
個人事業者は、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として消費税の納税義務が免除されます(国税庁 No.6501)。ただし登録を受けた場合は、この免除の対象から外れます。
戻りにくい点にも注意が必要です。登録した免税事業者は、少なくとも約2年は免税事業者に戻れません。正確な数え方は税務署に確認してください。登録すると、国税庁の公表サイトで個人事業者の氏名が公表されます。
取引先の種類別に見る、インボイスが必要な相手と不要な相手
登録が必要になるのは、取引先が「本則課税で申告する課税事業者」の場合です。それ以外の取引先には、インボイスは不要です(国税庁リーフレット、令和8年4月改訂)。
| 取引先の種類 | インボイスは必要か |
|---|---|
| 消費者(個人のお客さん) | 不要 |
| 免税事業者 | 不要 |
| 簡易課税制度を選んでいる課税事業者 | 不要 |
| 2割特例・3割特例で申告する課税事業者 | 不要 |
| 上記以外の課税事業者(本則課税) | 必要(仕入税額控除のため) |
課税事業者かどうかは、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで登録番号を検索すれば分かります。簡易課税かどうかは外からは分からないので、取引先に直接聞いてください。
登録しない場合、取引先と自分に何が起きるか
登録しないと、取引先の仕入税額控除は一部しか認められませんが、経過措置で一定割合は控除できます。割合は令和8年度の改正で延長・見直しされました。
| 取引先が支払った時期(課税仕入れ) | 控除できる割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 80% |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 70% |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 50% |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 30% |
| 令和13年10月1日以降 | 控除不可 |
出典は国税庁Q&A問113-3です。古い解説の「80%の次は50%、その後0%」は改正前の整理です。
取引先が控除できる額は、支払額(税込)×10/110×割合です。税込110万円を支払う場合の消費税相当額は10万円で、70%なら7万円が控除でき、3万円は控除できません。50%なら5万円と5万円、30%なら3万円と7万円です。
価格交渉については、公正取引委員会のQ&Aで、「課税事業者にならなければ価格を下げる」「応じなければ取引を打ち切る」と一方的に通告すると法令上問題となるおそれがあるとされています。不当な要求を受けたら公正取引委員会などに相談できます。
登録した場合の消費税負担は、年分によって選べる方法が変わる
登録した免税事業者の納付税額の選び方は、個人事業者の場合、年分ごとに下表のとおりです。
| 個人事業者の年分 | 選べる納付税額の方法 |
|---|---|
| 令和8年分(2026年分) | 2割特例(売上税額の2割)/簡易課税/本則 |
| 令和9年分・令和10年分 | 3割特例(売上税額の3割)/簡易課税/本則 |
| 令和11年分以降 | 簡易課税/本則(特例なし) |
2割特例は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間が対象で、個人は令和8年分の申告(2027年3月)が最後です(国税庁Q&A問114)。2026年10月以降に新たに登録する場合に令和8年分で使えるかは、一次情報で明示を確認できていません。税務署に確認してください。
3割特例は令和8年度税制改正で新設され、令和9年分・令和10年分の個人事業者が対象です。事前の届出は不要で、基準期間の課税売上高1,000万円以下などが要件、法人は使えません(国税庁 令和8年度税制改正特集)。
簡易課税は、届出をした課税事業者で基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合に使えます。納付税額は「売上税額−売上税額×みなし仕入率」で、サービス業などの第5種は50%、製造業などの第3種は70%です(国税庁 No.6505)。
売上別の消費税負担の計算表(仮の計算例)
仮の計算例です。標準税率10%の課税売上だけのサービス業を想定し、売上は税抜、消費税は地方消費税込みの10%で概算しています。軽減税率や複数の事業区分は考えていません。本則の列は、課税仕入れの消費税額を売上税額の10%と仮定しています。
| 税抜課税売上 | 売上税額(売上×10%) | 2割特例(売上税額×20%) | 3割特例(売上税額×30%) | 簡易課税 第5種(売上税額×(1−0.5)) | 簡易課税 第3種(売上税額×(1−0.7)) | 本則(売上税額−売上税額×10%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 30万円 | 6万円 | 9万円 | 15万円 | 9万円 | 27万円 |
| 500万円 | 50万円 | 10万円 | 15万円 | 25万円 | 15万円 | 45万円 |
| 800万円 | 80万円 | 16万円 | 24万円 | 40万円 | 24万円 | 72万円 |
登録しなければ、あなた自身の納付額は0円です。表の金額は、登録で新たに生じる負担の目安です。経費が多い、設備投資がある場合は本則が有利になることがあり、3割特例では通常、還付は生じません。実際の数字は税務署や税理士に確認してください。
法人化を考える場合は法人化と社会保険料の損益分岐点の記事や法人化か個人事業かを6つの条件で確認する記事をご覧ください。この記事は、個人のまま登録するかに絞っています。
登録を検討する人、しなくてよい人
登録を検討したほうがよいのは、売上の大半が本則課税の課税事業者との取引で、インボイスがないと取引継続が難しい人です。その場合も、先に取引先へ「簡易課税ですか」と確認すると、登録せずに済むことがあります。売上の大半が消費者や免税事業者、簡易課税・特例で申告する取引先の人は、登録しなくても取引先は困りません。
登録の申請は、納税地の所轄税務署長に出します。e-Taxなら個人事業者はスマートフォンでも可能ですが、マイナンバーカードなどの電子証明書が要ります(国税庁インボイスQ&A問2)。免税事業者が令和11年9月30日の属する課税期間までに登録する場合は、申請書に登録希望日(提出日から15日以降)を書けば、課税事業者選択届出書は不要です(問7)。年の途中で登録すると、登録日から12月31日までの分の申告が必要です(問8)。
登録後は、請求書に登録番号の記載が必要です。書き方は個人事業主の請求書の書き方と入金管理、ソフト選びは会計ソフトの選び方で確認できます。マネーフォワード クラウドは、登録番号を設定するとインボイスの要件を満たした請求書を作成できると公式サポートに案内されています。取引が少なく表計算や手書きで足りる人に、ソフトは不要です。
よくある質問
2割特例は2026年10月以降も使えますか?
個人事業者は令和8年分(2026年分)の申告までです。令和9年分・令和10年分は個人事業者のみ3割特例、令和11年分以降は特例がなく、簡易課税か本則になります。10月以降に新規登録した場合の令和8年分の扱いは、税務署に確認してください。
登録しないと取引先は困りますか?
取引先が本則課税の課税事業者なら、仕入税額控除が一部できなくなります。ただし経過措置で、2026年10月から70%、その後50%、30%と段階的に下がり、令和13年10月から控除できません。消費者や免税事業者、簡易課税などの取引先にはインボイスは不要です。
登録申請はいつまでに、どうやればよいですか?
免税事業者が令和11年9月30日の属する課税期間までに登録する場合は、登録希望日(提出日から15日以降)を記載して申請します。課税事業者選択届出書は不要です。e-Taxか郵送で提出でき、通知までの期間は申請状況で変わるため、国税庁の目安を確認してください。
次の一手
決めきれずにいたことを責める必要はありません。取引先ごとに条件が違う以上、迷うのは自然です。
まず主な取引先を書き出し、課税事業者か、簡易課税か、消費者かを確認し、計算表に自分の売上を当てはめて概算します。登録の判断は今日しなくて大丈夫です。「いつまでに取引先へ確認するか」の日付だけ、今日決めておきましょう。
登録すると決めたら、請求書の登録番号の設定から消費税の申告までを一つの流れにしておくと楽です。無料の確定申告自動化ソフト マネーフォワード クラウド確定申告![]()
消費税の申告に対応するプランは、契約前に公式サイトで確認してください。ほかの手続きは独立・副業のお金と手続きの一覧や青色申告承認申請書の提出期限の記事へ。青色申告の届出と簡易課税の届出は別の手続きです。
この記事の内容を自分の数字に当てはめて確認したい場合は、法人化 損益分岐シミュレーターで試算できます。
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参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」(2026年10月19日確認)
- 国税庁 タックスアンサー No.6505「簡易課税制度」(2026年10月19日確認)
- 国税庁 インボイス制度の概要/リーフレット「免税事業者の皆様へ インボイス制度について」(令和8年4月改訂)
- 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問2・問7・問8・問113-3・問114
- 国税庁 令和8年度税制改正特集(2割特例・3割特例・経過措置の適用期限一覧)
- 公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和4年1月策定)
- マネーフォワード クラウド サポート「【インボイスかんたんガイド】マネーフォワード クラウドでのインボイス対応について」(2025年8月4日更新)


