築15年超の実家、100万円かけて直すか手放すか|塗装・売却・放置の費用を比較
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誰も住まなくなった実家の外壁に、ひびや色あせが目立ちはじめていませんか。業者に相談すれば100万円級の話になりそうで、しかし直したところで住む人がいない。かといって放っておけば、親が手入れしてきた家が傷んでいくのを見過ごすようで後ろめたい。この記事では「直す・売る・そのまま置く」の3つの選択肢の費用と落とし穴を並べ、工事の見積もりを取る前に決めるべきことを1つに絞ってお伝えします。
「誰も住まない家に100万円」で迷うのは当然です——先に決めるのは工事ではなく用途
自分が住み続ける家であれば、外壁塗装は雨風から家を守るための出費として計算が立ちます。ところが誰も住んでいない実家では、その100万円が何のための投資なのかが宙に浮いたままです。迷いが続くのは、あなたが優柔不断だからではありません。決める順番が「工事をするかどうか」から始まっているためです。編集部にも、同じところで数年止まっているという声が届きます。
先に決めるのは用途、つまり「この家をこれから誰かが使うのか」です。自分や家族が住む、あるいは貸すのであれば、修繕は使うための準備になります。誰も使わないのであれば、100万円の塗装は回収のあてがない支出になり、手放す選択を先に検討したほうが筋が通ります。工事をするかどうかは、用途が決まれば自然に決まります。
3つの選択肢の費用感を並べる(直して住む・貸す/売る/そのまま置く)
気持ちの整理はいったん脇に置いて、数字だけ並べてみます。
| 選択肢 | 主にかかる費用 | 注意点 |
|---|---|---|
| 直して住む・貸す | 外壁塗装は30坪でおおむね総額60万〜120万円(塗料グレードにより幅。リショップナビ調べ) | 使う人と使う期間に合わせて、塗料のグレードを選べる |
| 売る | まとまった工事費は原則不要(今の状態のまま売る前提) | 手数料や税の特例は売り方で変わる。詳細は空き家・実家じまいジャンルの売却記事で |
| そのまま置く | 一見ゼロ円。ただし固定資産税と管理の手間が毎年続く | 劣化が進むと「管理不全空家」の指導・勧告により税負担が増えるリスク |
ここでのポイントは、「そのまま置く」がゼロ円に見えて、実際にはもっとも高くつくおそれのある選択肢だということです。次の章でその構造を説明します。
放置がいちばん高くつく構造——外壁劣化の進行と、管理不全空家の固定資産税リスク
外壁の塗膜には寿命があります。戸建てでよく使われるシリコン塗料で約10〜15年、フッ素塗料で約15〜20年が目安とされます(リショップナビ。環境や施工品質で変わります)。築15年を超えた家は、ちょうど塗膜の保護が切れはじめる時期です。ここから先の放置は「劣化が止まっている」のではなく、「進行に気づく人がいない」状態にすぎません。塗装で済んだはずの傷みは、外壁材の張り替えや雨漏り修理という、桁の変わった工事に育っていきます。
制度の面でも事情が変わりました。2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法では、倒壊のおそれがあるような「特定空家」だけでなく、その前段階にあたる「管理不全空家」も市区町村が指導・勧告できるようになりました。管理不全空家の目安は「窓・屋根・壁の一部が壊れている」といった状態で、外壁や屋根の放置とまっすぐつながっています。勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例(小規模住宅用地で課税標準6分の1)の適用から外れ、税額が最大6倍相当に増える可能性があります(国土交通省)。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査(2023年10月1日時点)によると、賃貸・売却用でも別荘でもない「その他の空き家」は385万6千戸で、5年前より36万9千戸増えました。実家の扱いを決めかねている家が、全国にそれだけあるということです。決めかねること自体は珍しくありませんが、放置だけは静かに費用が積み上がります。管理不全空家の具体的な条件と回避策は固定資産税が6倍に?「管理不全空き家」の条件と回避策で詳しく解説しています。
直す場合——住む家と貸す家で塗装のグレードは変えていい
用途が「使う」に決まったら、次はどこまでお金をかけるかです。答えは一律ではなく、使う人と期間で変えて構いません。自分や家族がこの先長く住むなら、耐用年数の長い塗料を選んで塗り替えの回数そのものを減らす考え方があります。一方、貸す予定なら、家賃収入で回収できる範囲に工事費を収めるのが基本で、住む場合と同じグレードにこだわる必要はありません。坪数別・塗料別の相場と見積書のどこを見るかは外壁塗装の費用相場は30坪でいくら?にまとめています。
金額が大きいだけに、1社の見積もりだけで決めないでください。特に実家が遠方にある場合、地元の相場観がないまま最初の1社の言い値を受け入れてしまいがちです。複数社の見積もりを同じ条件で並べれば、金額の妥当性は自分で判断できるようになります。まとめて依頼する方法は外壁塗装の一括見積もりサイト3社比較で解説しています。
手放す場合——直してから売るのは原則NGな理由
「傷んだままでは売れないだろうから、100万円かけて直してから売ろう」と考える方は少なくありません。ですが、これは原則としておすすめできません。理由は3つあります(住友林業ホームテック・明和地所)。第一に、中古住宅の価格は立地と築年数で大枠が決まるため、リフォーム費用を上乗せした価格は相場から外れて売れにくくなります。第二に、外壁の色や内装の仕上げが買主の好みと合わなければ、かけた費用が逆効果になります。第三に、中古住宅には「安く買って自分好みに直したい」という買主層がいて、先に直してしまうとその層を逃します。つまり、100万円かけても売価が100万円上がるとは限らない、というのがこの話の核心です。
手放すと決めたら、今の状態のまま売るのが出発点です。売り方には市場価格を狙う「仲介」と、早く確実に手放せる「買取」の2つがあり、傷みの進んだ家や遠方の実家には買取という受け皿もあります。両者の違いと選び方は空き家の買取と仲介、どっちが得? 一括査定を使う前に知るべきことで整理しています。「田舎だから売れない」と感じている方は「田舎の実家、売れない」は本当かもあわせてどうぞ。相続手続きや管理を含めた全体像は空き家・実家じまいジャンルにまとまっています。
今日決めるのは1つだけ——「誰かが使う家か、使わない家か」
ここまでを一枚に畳むと、決めることは1つだけです。この家を、これから誰かが使うのか。使うなら、直す方向で複数社の見積もりを取り、金額の裏を取る。使わないなら、直す前に売却の相場を知る。どちらに転んでも、次にやることは「工事の契約」ではなく「数字を集めること」なので、今日の時点で後戻りできなくなる決断はありません。
そして、どちらを選んでも家をないがしろにする話ではありません。使う人のために整えるのも、次に使う人へ渡すのも、その家の役目を続けさせるという意味では同じ選択です。
次の一手
- 「この家をこれから誰かが使うか」を、自分の言葉で一度書き出し、きょうだいや家族に共有する(メール1本で十分です)
- 使うなら、費用相場で金額の目安を掴んだうえで、複数社の見積もりを同条件で集める
- 使わないなら、直す前に買取と仲介の違いを確認し、今のままの家の価値を査定で知る
ここまで決めきれずにいたのは、あなたが怠けていたからではありません。比べるための数字が手元になかっただけです。今日、直すか手放すかまで決める必要はありません。ただ、「いつまでに、誰と相談して決めるか」だけ、今日決めておきませんか。