退職代行を使うと会社から損害賠償を請求される?よくある不安とその実際

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退職代行を使おうかと思うのに、「会社から損害賠償を請求されたらどうしよう」という不安で足が止まっていないでしょうか。SNSや知恵袋には「訴えられた」という書き込みも見かけ、余計に怖くなってしまうかもしれません。実際には、損害賠償請求が法的に認められるにはいくつかの厳しい条件があり、単に退職代行を使って辞めたというだけで賠償が発生することは、法的にはほとんど想定されていません。この記事では、その条件の中身と、実際に認められた裁判例、そして「損害賠償するぞ」と言われたときの向き合い方を、一次情報をもとに整理します。

この記事の結論

損害賠償が認められるには、故意・過失による義務違反と具体的な損害の発生の両方が必要で、実際に認められた例は極めて稀とされています。

  • 退職代行を使ったこと自体や、退職したという事実だけで賠償が発生することは原則ありません
  • 引き継ぎを故意に放棄した、重要な機密情報を持ち出したといった悪質なケースはリスクが残ります
  • 今日やることは、自分の退職の経緯に「悪質な事情」がないかだけ確認することです

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損害賠償が認められるための2つの要件——「辞めた」だけでは足りない

会社が労働者に損害賠償を請求できるのは、①労働者側に故意または過失による義務違反(加害行為)があったこと、②その行為によって会社に具体的な損害が現実に発生したこと、この2つがそろって初めてです(出典: ベリーベスト法律事務所)。単に「退職した」「引き継ぎが不十分だった」というだけでは、この2つの要件を満たさず、請求は認められないとされています。

業務の停滞や急な欠員による採用コストの増加は、法的には抽象的な損害とみなされやすく、会社側が具体的な金額の損害を立証できなければ請求は成立しません。さらに、期間の定めのない雇用契約(正社員や無期パートなど)であれば、労働者は理由を問わず退職できるとされ、退職そのものを理由にした賠償責任は原則発生しないとする整理もあります(出典: アディーレ法律事務所)。契約社員など期間の定めがある雇用で、かつ労働者側に何らかの過失があるような場合に限り、請求を受ける可能性が出てくるとされています。

なお、就業規則や誓約書に「途中で辞めたら違約金〇万円」「研修費用を返還」といった定めがあっても、労働基準法16条によりこうした定めは無効で、労働者に支払い義務はありません。

実際に認められた裁判例は稀——ケイズインターナショナル事件をどう見るか

弁護士の解説を確認すると、複数の法律事務所のコラムが「実際に損害賠償が認められた事例は極めて稀」と明記しています(出典: たきざわ法律事務所、ベンナビ労働問題)。今回の調査でも、退職代行の利用そのものが原因で会社の請求が裁判所に認められた具体的な判例は見つかりませんでした。

労働問題の解説でよく引用されるのが、ケイズインターナショナル事件(東京地裁・平成4年=1992年9月30日判決)です。ビルインテリアデザイン会社が、取引先との3年契約を履行するために新たに採用し常駐させた担当者が、入社間もなく病気を理由に欠勤し辞職したという事案で、会社は取引先との契約が解約されたとして得べかりし利益1,000万円を主張し提訴しました。裁判所は経費を差し引いた実損額や会社側の労務管理上の問題も考慮したうえで、請求額200万円を減額し、70万円と年5%の遅延損害金の支払いを命じています(出典: 労働問題.com、全国労働基準関係団体連合会)。

ただしこの事案は、退職代行を利用した人の判例ではありません。新規事業のために特別に採用された担当者が入社直後に離脱し、具体的な契約の損失につながったという特殊な事情のある古い事案であり、通常の退職代行の利用ケースにそのまま当てはめられるものではないとされています。この事案でも会社側の請求額から大きく減額されている点は、損害賠償が認められる要件の厳格さを示す参考例として見ておくのが妥当です。

「損害賠償するぞ」という言葉にどう向き合うか

会社側から「損害賠償を請求するぞ」と言われても、それは単なる脅しである可能性が高いという見解が弁護士から示されています(出典: ベンナビ労働問題)。実際に提訴まで進めるには会社側にも費用と労力がかかるため、多くは内容証明を送る、口頭で警告するといった段階で終わり、実際の提訴には至らないとされています(出典: 青森市・八戸市企業法務弁護士サイト)。

ここで知っておきたいのが、退職代行の種類による対応範囲の違いです。民間の退職代行業者は「退職の意思を伝える使者」としてしか動けず、会社との交渉や反論を行うと弁護士法72条の非弁行為に該当するおそれがあります。損害賠償を請求すると言われたときに代わりに交渉・反論できるのは、弁護士型(一部、労働組合型は団体交渉権の範囲内)に限られます。各タイプの権限の違いは退職代行のタイプ比較の記事で整理しています。

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引き継ぎをしないまま辞めるリスクの実際

労働者には信義則(契約上の誠実義務)に基づき、後任への引き継ぎを行う義務があるとされています。引き継ぎを一切行わずに退職し、会社に業務上の損害が生じた場合、損害賠償請求を受ける可能性は「ゼロではない」とされます。ただし実際に請求が認められるのは、退職者しか知り得ない情報があり、かつ緊急性の高い引き継ぎが必要だったにもかかわらず正当な理由なく拒否した、といった限定的な場合に限られます(出典: 青森市・八戸市企業法務弁護士サイト)。

引き継ぎ不足を理由に実際の訴訟にまで発展するケースは稀で、会社側が具体的な損害額や因果関係を立証する負担が重いため、多くは内容証明や口頭警告の段階で終わるか、そのまま終息するとされています。今回の調査でも、引き継ぎ拒否・未実施のみを理由に賠償額が確定した具体的な判例は見つかりませんでした。とはいえ、引き止めに応じられず即日退職を選ぶ場合でも、可能な範囲で引き継ぎメモを残しておくと安心材料になります。引き止めの断り方は引き止めを断る伝え方の記事で具体的に整理しています。

よくある質問

損害賠償が不安でも退職代行は使えますか?

使えます。損害賠償が認められるには故意・過失の義務違反と具体的な損害の発生の両方が必要で、実際に認められた例は極めて稀とされています。悪質な事情がない限り過度に恐れる必要はなく、心配であれば申し込み前の無料相談で状況を話すこともできます。

退職代行を使うと会社から必ず損害賠償請求されますか?

必ずされるわけではありません。単に退職した、引き継ぎが不十分だったというだけでは要件を満たさず、請求は認められないとされています。故意・過失の義務違反と具体的な損害の発生の両方がそろって初めて成立し、会社が支障を感じただけでは足りません。

引き継ぎをしないで辞めても大丈夫ですか?

リスクはゼロではありませんが、実際に請求が認められるのは、退職者しか知り得ない情報があり緊急性の高い引き継ぎを正当な理由なく拒否した、といった限定的な場合に限られるとされています。可能な範囲で引き継ぎメモを残しておくと安心です。

次の一手

「損害賠償を請求されるかもしれない」という不安の多くは、要件を知らないまま漠然と怖がっている状態から来ています。故意・過失の義務違反と具体的な損害の発生、この2つがそろわなければ請求は成立せず、実際に認められた例も極めて稀です。

今日、退職そのものを決めなくてかまいません。ただ、次の2つだけ確認してみてください。①自分の退職の経緯に、引き継ぎの故意の放棄や機密情報の持ち出しといった悪質な事情がないか、②不安なまま一人で抱えず、無料相談で状況を話せる窓口があること。この2つが確認できれば、あとは「いつ決めるか」だけです。

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