実家のきょうだい共有名義は避けるべき?相続の分け方4つと共有を解消する方法
本記事にはプロモーション(広告)が含まれます。掲載サービスの選定基準は広告掲載ポリシーをご覧ください。
実家の相続で、きょうだいの間に「とりあえず共有名義にしておこう」という空気が流れていませんか。角を立てたくない気持ちは自然なものです。ただ、2024年4月から相続登記は義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内に登記をしないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象になります。「決めないでおく」という選択肢は、もう残されていません。この記事では、共有名義の行き詰まりの構造と遺産分割の4つの方法、共有を解消する道筋を整理します。
実家のきょうだい共有名義は、避けたほうがよい場面が多い分け方です。売却に共有者全員の同意が必要になるなど制約が大きく、問題の先送りになりやすいためです。
- 売却などの処分には共有者全員の同意が必要です(民法251条)。次の相続で共有者が増えると、さらに動かしにくくなります
- 分け方は現物・代償・換価・共有の4つ。共有以外の3つを先に検討するのが基本です
- 今日やることは、きょうだいと次に話す日をいつにするか決めることだけです
代償分割の代償金や換価分割の税金など、お金の論点はきょうだいだけでは詰め切れません。相続に強い税理士を無料で検索し、複数の候補を比較して選べるサービスもあります。相続での税理士選びなら税理士ドットコム
相続での税理士選びなら税理士ドットコム
結論: 「とりあえず共有」は解決ではなく先送りになりやすい
きょうだいの共有名義は一見公平に見えますが、実際には「決めるべきことを、より動かしにくい形で持ち越す」分け方になりやすいのが実情です。2023年4月施行の現行民法では、売却や取り壊しなど共有物の変更・処分には共有者全員の同意が必要で(民法251条1項)、賃貸などの管理に関する事項も、人数ではなく持分の価格の過半数で決めます(民法252条1項)。ただし、近く全員で売る前提の一時的な共有など、合理的な場面もあります。大事なのは、デメリットの構造と期限を知った上で選ぶことです。相続の手続き全体がこれからという方は、先に相続直後にやるべきことを整理した記事をご覧ください。
共有名義で起きやすい3つの行き詰まり——売れない・貸せない・共有者が増える
共有名義の行き詰まりは、大きく3つに整理できます。
1つ目は「売れない」です。実家全体の売却は変更・処分にあたり、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。一人でも反対や音信不通の人がいれば、その形では売れません。自分の持分だけなら単独で売却できますが、買い手は共有持分を専門とする買取業者が中心で、価格は評価額の30〜50%程度とする専門家・業者の解説が複数あるなど、大幅に安くなる傾向があります(公的な統計はありません)。また第三者に持分が渡ると、残ったきょうだいは見知らぬ業者と共有関係になります。
2つ目は「貸せない」です。建物の賃貸借は3年を超えない短期なら持分価格の過半数で設定できますが(民法252条4項)、長期の賃貸借は変更にあたり全員の同意が必要と整理されています。雨漏りの修繕などの保存行為だけは一人でもできます(同条5項)。
3つ目は「次の相続で共有者が増える」です。共有者の誰かが亡くなると、その持分はさらにその相続人へ分かれていきます。全国の土地の23%は登記簿だけでは所有者の所在が分からない「所有者不明土地」で(令和6年・2024年の国土交通省調査)、その面積は九州より広いといわれ、発生原因の63%は相続時の名義変更(相続登記)が行われなかったことです(政府広報オンライン)。共有者が増えてからでは、話し合いの難しさは別物になります。
遺産分割の4つの方法——現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の整理
遺産の分け方には4つの方法があり、共有分割はその1つにすぎません。
| 方法 | 内容 | 向いている場合・注意点 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 遺産を財産ごとに現物のまま割り振る(実家は長男・預金は長女など) | 財産構成上きれいに分けられる場合向き。実家1軒だけだと不公平になりやすい |
| 代償分割 | 一人が実家を取得し、他のきょうだいに代償金を支払う | 実家に住み続けたい人がいる場合向き。代償金を払える資力が前提 |
| 換価分割 | 実家を売却して現金に換え、代金を分ける | 誰も住まない・公平に分けたい場合向き。売却の手間と譲渡所得税などが絡む |
| 共有分割 | きょうだいの共有名義で登記する | 一見公平だが、同意ルールの制約の先送りになりやすい |
どの方法が有利かは家族構成・資力・税務で変わるため断定できません。ただ、裁判所が分割を命じる場合も、条文上は現物分割、次に代償(賠償)分割を検討し、難しいときに競売という順で組み立てられており(民法258条2項・3項)、共有のまま維持することは解決の形として想定されていません。また、分け方を決めないまま相続開始から10年が経過すると、原則として生前贈与(特別受益)や介護の貢献(寄与分)を反映した取り分を主張できなくなり、法定相続分が基準になります(民法904条の3)。遺産分割自体は10年後も可能とされています。誰も実家を引き取りたくない場合は、相続放棄と空き家の管理義務を整理した記事もご覧ください。
すでに共有になっている実家をどう解消するか
すでに共有登記をした場合でも、解消する道は大きく3つあります。1つ目は、持分の売買・贈与による一人への集約です。買い取る側には資金が必要で、売った側に譲渡所得税、贈与なら贈与税がかかり得ます(暦年課税では年110万円以下なら基礎控除の範囲内。計算は税理士・税務署へ)。2つ目は、全員の合意で実家全体を売却し、代金を持分割合で分ける方法です。持分だけの売却と違い市場価格で売りやすい、現実的な出口です。売り方は買取と仲介の違いを整理した記事が参考になります。3つ目は裁判所の手続きです。各共有者はいつでも共有物の分割を請求でき(民法256条1項)、協議がまとまらないときは裁判所に請求できます(民法258条1項・共有物分割請求訴訟)。実務上は地方裁判所への提起が一般的とされています。
注意したいのは、実家がまだ遺産分割前の共有(遺産共有)の場合です。このときは原則として共有物分割訴訟は使えず、家庭裁判所での遺産分割の手続き(協議・調停・審判)によります(民法258条の2第1項)。相続開始から10年が経過すると、相続人の異議の申出がない限り共有物分割訴訟で処理できるようになります(同条2項・3項)。どちらの入口かの判断も含め、訴訟を検討する段階では弁護士に相談してください。
きょうだいの話し合いの進め方——お金の話と感情の話を分ける
話し合いを前に進めるコツは、お金の話と感情の話を切り分けることです。こじれるとき、対立しているのは金額ではなく、「思い出の家を売るのか」「親の面倒を見たのは誰か」といった感情であることが少なくありません。編集部にも同じ声が多く届きます。感情の話には時間を取り、お金の話は客観的な数字を土台にする——この順番だけで空気は変わります。
その土台になるのが実家の「今の値段」です。価格には水準の異なる3つの資料があります。課税明細書で確認できる固定資産税評価額は地価公示の水準の7割程度、国税庁サイトで見られる相続税路線価は8割程度、不動産会社の査定は「実際に売ったらいくらか」という市場の時価です。別々の資料を前提に話すと平行線になります。同じ資料を机に並べて前提を揃えることが、感情論に戻らない最初の一歩です。換価分割や代償分割が視野に入るなら、時価を知るために査定を取っておくと話が具体的になります。物件の無料売却査定(訪問査定)を申し込む
まとまらないときの相談先——司法書士・弁護士・裁判所の入口
まとまらないときは、一人で抱え込まず専門家を頼ってください。登記の手続きは司法書士、紛争の代理・交渉ができるのは弁護士のみ、相続税・贈与税・譲渡所得税は税理士という役割分担です。税理士は税金の相談相手であり、きょうだいとの交渉は代われません。対立が深いなら最初から弁護士のほうが早い場合もあります。
裁判所の手続きの入口は2つです。遺産分割前なら家庭裁判所の遺産分割調停で、申立先は相手方のうち一人の住所地の家庭裁判所(または合意で定める家庭裁判所)。費用は収入印紙1,200円(被相続人1人につき)と連絡用の郵便切手で、戸籍謄本や登記事項証明書などの書類も必要です。調停が不成立なら自動的に審判に移行します。共有登記後の解消は、前の章の共有物分割請求訴訟(地方裁判所)です。なお、財産が実家と少額の預金だけで意見も一致しているなら、司法書士への登記依頼で足りることもあります。専門家への相談が活きるのは、お金の論点で結論が出せないときです。
よくある質問
実家をきょうだいの共有名義で相続するとなぜ困るのですか?
売却や取り壊しに共有者全員の同意が必要になるためです(民法251条)。一人でも反対や音信不通の人がいると実家全体を売れません。次の相続で共有者が増えると、さらに動かせなくなります。
共有名義の実家は一人の判断で売れますか?
実家全体を売ることはできません。売却には共有者全員の同意が必要です(民法251条)。自分の持分だけなら単独で売却できますが、買い手は共有持分専門の買取業者が中心で、評価額の30〜50%程度とする解説が複数あり、大幅に安くなる傾向があります。
共有名義を解消するにはどうすればいいですか?
主な方法は、持分の売買・贈与で一人に集約する、全員合意で売却して代金を分ける、裁判所の手続きを使うの3つです。共有登記後は地方裁判所の共有物分割請求訴訟、遺産分割前は家庭裁判所の調停・審判と入口が異なるため、迷ったら弁護士に確認してください。
次の一手
きょうだいに財産の話を切り出せずにいるのは、あなたが優柔不断だからではありません。多くの方が同じところで立ち止まります。共有名義を選ばないことは、次の世代に問題を持ち越さないための段取りです。今日、結論を出す必要はありません。今日やることは、次に話す日を決めることと、固定資産税の課税明細書を用意しておくことだけです。お金の論点で行き詰まりそうなら、相続に強い税理士に相談する準備を先にしておくのも一つです。無料で検索でき、複数の税理士を比較して選べます。相続での税理士選びなら税理士ドットコム
参考資料
- e-Gov法令検索 民法(251条・252条・256条・258条・258条の2・904条の3・907条): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
- 政府広報オンライン「所有者不明土地」: https://www.gov-online.go.jp/article/202512/entry-10447.html
- 東京法務局「相続登記の申請義務化について」: https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000275.html
- 裁判所「遺産分割調停」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html
- 国土交通省「主な公的土地評価一覧」: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000042.html
- 国税庁 タックスアンサーNo.4402「贈与税がかかる場合」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm
この記事は2026年7月時点で確認できた法令・制度に基づいています。どの分け方が有利か、訴訟を起こすべきか、税額がいくらになるかは個別の事情で変わります。実行前に司法書士・弁護士・税理士など専門家に確認してください。


