実家を相続放棄したら空き家はどうなる?管理義務と放棄前に確かめる3つのこと
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実家の相続について、プラスの財産よりも管理の手間のほうが大きく感じられ、「いっそ相続放棄をしてしまおうか」と考え始めていませんか。ただし、相続放棄をした瞬間に実家と完全に無関係になれるとは限りません。放棄するかどうかの判断に迷って手続きを先延ばしにしていると、放棄が確定するまでの間に、実家の固定資産税の納税通知書がその年に届くことがあります(自治体の運用)。この記事では、相続放棄をしたあとに空き家がどうなるのか、そして放棄を決める前に確かめておきたい3つのことを整理します。
相続放棄をしても、放棄の時点で実家を占有していた人には、次の管理者へ引き渡すまで保存義務が残ります。
- 民法940条により、放棄の時に実家を「現に占有」していた人だけが保存義務を負います。遠方に住んでいて占有していなければ、通常は負わないと整理されます
- 相続人全員が放棄すると、家庭裁判所が選任する相続財産清算人が実家の管理を引き継ぎます。申立てには収入印紙・官報公告料に加え、事案によって予納金が必要になることがあります
- 今日やることは、放棄を決める前に「放棄前に確かめる3つのこと」を確認することだけです
相続放棄をするかどうかは、プラスの財産まで含めた財産全体を把握してから判断する必要があります。財産の整理に不安がある場合は、税理士に相談する方法もあります。相続税申告での信頼できる税理士選び
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結論: 相続放棄をしても、その時点で家と無関係になれるとは限らない
「相続放棄をすれば、実家の管理からも解放される」——そう考えている方は少なくありません。ですが、2023年4月に施行された改正民法940条では、相続放棄をした人であっても、「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」に限り、相続人または相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産と同じ注意をもってその財産を「保存」する義務を負う、と定められています。この保存義務は、以前の管理義務よりも軽い、滅失・毀損させない程度の最小限の義務に整理し直されたものです。実家に住んでいる、または鍵を管理して出入りしているなど、実家を現に占有している人と、遠方に住んでいて実家に足を運んでいない人とでは、この義務の有無が変わってきます。ただし「占有している」かどうかの判断はケースによって分かれるため、断定はできません。まずは自分がどちらに近いのかを、次の章から確認していきます。相続の手続き自体がまだ終わっていない場合は、先に相続直後にやるべきことを整理した記事もあわせてご覧ください。
相続放棄の基本——期限・手続き・「一部だけ放棄」はできないこと
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(熟慮期間)に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条)。手続きには収入印紙800円(申述人1人につき)と、連絡用の郵便切手が必要です。3か月では単純承認・限定承認・相続放棄のどれを選ぶか判断できない場合は、家庭裁判所に「期間の伸長」を申し立てることもできます。
相続放棄が認められると、その相続に関しては初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。放棄した人の子どもに代襲相続権は発生しません。また、相続放棄は「借金だけ放棄してプラスの財産だけ相続する」という一部だけの選択はできず、相続財産全体をまとめて手放す意思表示です。プラスの財産の範囲内でだけ債務を引き継ぐ「限定承認」という制度もありますが、これは相続人全員が共同で熟慮期間内に申述する必要があり、自分一人だけでは選べません。
放棄したあとの空き家は誰が管理するのか——相続財産清算人の仕組み
相続人全員が相続放棄をするなどして相続人が誰もいなくなった場合、被相続人の債権者などの利害関係人や検察官の申立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任します。申立て先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所で、費用は収入印紙800円と郵便切手に加え、官報公告料5,582円がかかります。さらに、相続財産だけでは清算にかかる費用や清算人の報酬をまかなえないと見込まれる場合は、申立人に「予納金」の納付が求められることがあります。予納金の金額を裁判所は「相当額」としか案内しておらず一律の相場はありませんが、専門家の解説では財産構成によって数十万円から100万円程度まで幅があるとされています。事案ごとに家庭裁判所が金額を決めるため、申立てを検討する段階で家庭裁判所へ確認することをおすすめします。清算人が財産の清算を終えたあと、残った財産は最終的に国庫に帰属します。
放棄前に確かめる3つのこと
相続放棄は一度受理されると、原則として撤回できません。決める前に、次の3つを確かめておくことをおすすめします。
- プラスの財産を含めた全体を把握しているか。「実家がいらないから放棄する」という判断だけでは、預貯金や生命保険、逆に負っている借金まで含めた全体像を見落とすことがあります。相続放棄は財産全体をまとめて手放す手続きであり、実家だけを選んで放棄することはできません。何から手をつければよいか整理したい場合は『身近な人が亡くなった後の手続のすべて 改訂版』のような手続き全体を俯瞰できる書籍が参考になります(価格はAmazonで確認)。
- 次に相続人になる親族への影響を考えているか。自分たち(先順位の相続人)が全員放棄すると、次順位の親族(子が全員放棄すれば親、それも放棄すればきょうだいなど)が新たに相続人になります。次順位の相続人の熟慮期間は、先順位者の放棄と同時に自動で始まるのではなく、「自分が相続人になったことを知った時」から改めて数えられます。放棄を決める前に、次順位にあたる親族へ事前に伝えておくかどうかも検討しておきたい点です。
- 自分がその家に住んでいないか。放棄の時点で実家を現に占有しているかどうかで、保存義務の有無が変わってきます。実家に住んでいる、あるいは頻繁に出入りして管理している場合は、放棄後の対応について司法書士・弁護士に確認しておくと安心です。
放棄以外の選択肢と並べて比べる——売却・国庫帰属・持ち続ける
相続放棄は選択肢の一つであり、唯一の答えではありません。実家を手放したい理由が「管理の負担」であれば、放棄以外にも選択肢があります。
1つ目は売却です。実家を相続した上で売れば、プラスの財産として現金化できます。建築年などの条件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例もあります(詳しくは相続空き家の3,000万円特別控除を整理した記事)。ただし、田舎の実家など買い手が見つかりにくい物件もあり、売れにくい実家の出口を整理した記事もあわせて確認しておくと判断しやすくなります。売却が視野に入る場合は、まず今の家がいくらで売れるのかを知っておくことが判断材料になります。物件の無料売却査定(訪問査定)を申し込む
2つ目は相続土地国庫帰属制度です。相続で取得した土地を、法務局の承認を受けて国庫に帰属させる制度で、相続放棄とは違い「土地だけ」を選んで手放せます。ただし建物がある土地は対象外のため、実家が建ったままでは申請できず、解体してからでないと使えません。費用も、審査手数料が土地1筆あたり14,000円、承認後の負担金が原則20万円かかります。3つ目は、そのまま持ち続けて管理する選択肢です。将来住む予定や活用の見込みが少しでもあるなら、放棄で手放してしまう前に、管理を続けながら出口を先送りする道も残ります。放棄・売却・国庫帰属・維持のどれが向いているかは家庭の事情次第で、「実家を将来使う予定がまったくない人」と「まだ使うかどうか決めかねている人」とでは、選ぶべき道が変わってきます。
期限がある手続きだからこそ——司法書士・弁護士へ相談するタイミング
相続放棄は3か月の熟慮期間という期限がある手続きで、一度受理されると原則撤回できません。「放棄の時に現に占有しているか」「次順位の相続人にどう影響するか」といった判断は、家庭の状況によって答えが変わり、この記事だけで断定することはできません。期限が迫っていて判断に迷う場合や、熟慮期間の伸長を申し立てるべきか悩む場合は、早めに司法書士・弁護士に相談することをおすすめします。次によくある質問をまとめます。
よくある質問
相続放棄すれば空き家の管理責任はなくなりますか?
必ずしもそうとは限りません。民法940条により、放棄の時点で実家を現に占有していた場合は、次の管理者に引き渡すまで「保存義務」が残ります。遠方に住んでいて実家を占有していなければ、通常はこの義務を負わないと整理されますが、該当するかどうかはケースによるため、司法書士・弁護士に確認することをおすすめします。
相続放棄の期限はいつまでですか?
自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(熟慮期間)に、家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条)。3か月では判断が間に合わない場合は、家庭裁判所に「期間の伸長」を申し立てることができます。
相続放棄と相続土地国庫帰属制度はどう違いますか?
相続放棄は相続財産全体をまとめて手放す手続きで、家庭裁判所へ申述します。相続土地国庫帰属制度は特定の土地だけを選んで手放せる制度で、法務局へ申請します。ただし建物がある土地は対象外で、審査手数料は土地1筆あたり14,000円、承認後の負担金は原則20万円かかります。
次の一手
実家を手放す判断に迷うのは、自然なことです。相続放棄をするかどうかは、家族の事情によって答えが変わり、放棄すれば必ず楽になるとも限りません。今日、答えを出す必要はありません。今日やることは、相続開始を知った日から数えて3か月の期限をカレンダーで確認すること、そしてこの記事の「放棄前に確かめる3つのこと」をもう一度読み返すことだけです。財産全体を含めた判断材料を整理したい場合は、税理士に相談する方法もあります。相続税申告での信頼できる税理士選び
参考資料
- e-Gov法令検索 民法(915条・939条・940条): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 裁判所「相続の放棄の申述」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html
- 裁判所「相続財産清算人の選任」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_15/index.html
- 法務省 相続土地国庫帰属制度: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
この記事は2026年7月時点で確認できた法令・制度に基づいています。個別の事情による判断は、司法書士・弁護士・税理士など専門家に確認してください。


