実家を相続したら相続税の申告は必要?基礎控除と小規模宅地等の特例で判定する手順

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実家を相続したものの、相続税がかかるのか、申告は自分がやらなければいけないのか、見当がつかない。気持ちの整理もつかないうちに、税金の話だけが先に押し寄せてくる。多くの方が、この「要るのか要らないのか分からない」状態で立ち止まります。分からないまま動けずにいるのは、あなたが怠けているからではありません。

ただし、相続税の申告には「死亡を知った日の翌日から10か月」という期限があります。遺産分割が間に合わないと特例が使えない申告になるなど、期限は判断に直結します。この記事では、実家の評価額を自分で概算し、基礎控除と比べて、申告が要るかどうかの目安をつけるところまでを順番に説明します。

この記事の結論

取得した財産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるなら申告が必要です。この判定は小規模宅地等の特例を使う前の金額で行います。

  • 実家の土地は路線価、建物は固定資産税評価額で概算できる
  • 特例で評価が下がっても、特例を使うには申告が必要
  • 今日やることは、固定資産税の納税通知書を探すことだけ

基礎控除を超えそうな方や、特例が使えるか迷う方は、相続での税理士選びなら税理士ドットコムで、相続税に対応する税理士を探す入り口があります。ただし後述のとおり、基礎控除の範囲内なら税理士は不要なこともあります。

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まず基礎控除額を計算する

基礎控除額は、3,000万円に600万円をかけた法定相続人の数を足して求めます。たとえば法定相続人が2人なら、3,000万円+600万円×2=4,200万円です(国税庁 タックスアンサー No.4152)。

人数の数え方には注意点があります。相続放棄をした人も、放棄がなかったものとして人数に数えます。養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで数えます。

なお、売却時の「空き家の3,000万円特別控除」は所得税の制度で、ここで使う基礎控除や次に出てくる相続税の小規模宅地等の特例とは別のものです。名前が似ているので、混ぜないようにしてください。売却側の話は相続空き家の3,000万円特別控除の条件と手続きで扱っています。

実家の評価額を自分で概算する

土地と建物で、概算の方法が違います(国税庁 No.4602)。

対象 概算の方法 確認する資料
土地(路線価のある地域) 路線価×面積(実際は形状などによる補正率がかかるため、補正前の概算) 国税庁の路線価図
土地(路線価のない地域) 固定資産税評価額×評価倍率 納税通知書、国税庁の評価倍率表
建物 固定資産税評価額と同じ額 固定資産税の納税通知書(課税明細書)や市区町村

路線価図は千円単位で表示されています。相続の場合は、亡くなった年の路線価を見ます。令和8年分は、国税庁の財産評価基準書のサイトで公開されています。

固定資産税評価額は、毎年届く納税通知書の課税明細書で確認できます。見つからないときは、市区町村の窓口で確認する方法があります。ここまでの作業で足りるのは、あくまで「申告が要りそうかどうか」の目安です。正確な評価額は税理士や税務署の確認で変わります。

申告が要るかを判定する

取得した財産の合計が基礎控除額を超えるなら、申告と納税が必要です。範囲内なら、申告も納税も不要です(国税庁 No.4205)。

ここで見落としやすいのが、比べる合計額の中身です。基礎控除と比べるのは、小規模宅地等の特例などを適用しない場合の課税価格の合計額です。特例で評価を減らせば基礎控除内に収まるとしても、特例なしの合計が基礎控除を超えているなら、申告が必要になります。

預貯金などの金額は、実家以外にも合計に入ります。生命保険金、債務、葬式費用、生前贈与なども計算に影響する場合があるので、該当しそうな方は税理士に確認してください。

仮の計算例で3パターンを見る

以下はすべて、説明のための仮の数字です。実在の事例ではありません。路線価は補正率を考慮しておらず、特例は要件を満たすと仮定した場合の話で、適用できるかどうかは断定できません。

パターンA パターンB パターンC
法定相続人 子2人 子1人 配偶者と子2人(3人)
基礎控除 4,200万円 3,600万円 4,800万円
土地(補正前) 20万円/㎡×150㎡=3,000万円 10万円/㎡×200㎡=2,000万円 30万円/㎡×150㎡=4,500万円
建物 800万円 300万円 500万円
預貯金 1,000万円 800万円 2,000万円
特例なしの合計 4,800万円 3,100万円 7,000万円
判定の目安 基礎控除超(申告要) 基礎控除内(不要の目安) 基礎控除超(申告要)

パターンAとCは、特例なしの合計が基礎控除を超えています。仮に特例が使えるとすると、Aは土地3,000万円の80%にあたる2,400万円が減り、合計は2,400万円になります。Cは土地4,500万円の80%にあたる3,600万円が減り、合計は3,400万円です。数字の上では基礎控除内ですが、判定はあくまで特例なしの合計で行うため、申告は必要です。そして特例を使うには、申告書での適用の選択が求められます。

Cは配偶者の税額軽減も関わるため、税額が0円になる可能性はありますが、その場合の申告の要否は個別に税務署や税理士へ確認してください。

パターンBは、基礎控除内に収まるため申告と納税は不要という目安になります。ただし、加算される項目が別にあれば超える場合もあります。

小規模宅地等の特例が実家に当てはまりそうか

特例は、被相続人が住んでいた土地のうち330㎡までの部分について、評価額を80%減らせる制度です(国税庁 No.4124)。ここでいう330㎡までの部分が対象で、それを超える面積の計算は税理士に確認してください。

当てはまるかどうかは、土地を取得する人によって変わります。入口のチェックとして、次の整理を使ってください。

  • 配偶者が取得する場合は、取得者ごとの要件はありません
  • 同居していた親族は、相続開始の直前から申告期限まで住み続け、土地を申告期限まで保有する必要があります
  • 別居の子が取得する場合は、被相続人に配偶者がいない、同居の相続人がいない、持ち家がないなど、複数の要件をすべて満たす必要があります

とくに別居の子の場合は条件が厳しく、実家を相続する方の多くがここで迷います。当てはまりそうでも、断定はできません。適用の可否は、税理士に確認するのが確実です。

特例を使うには、申告書で適用を選択し、明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付します。相続人が複数いる場合は全員の同意が必要で、原則として申告期限までに遺産分割が済んでいることが求められます。

申告期限は10か月、遺産分割が終わらないときは

申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。たとえば1月6日に亡くなった場合は、同じ年の11月6日が期限です。期限が土日祝日にあたるときは、その翌日が期限とみなされます。提出先は、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署です(国税庁 No.4205)。

遺産分割が10か月以内にまとまらなくても、期限は延びません。その場合は法定相続分で申告し、その申告には特例を適用できません。のちに分割できたときは、原則として申告期限から3年以内の分割に限り、修正申告または更正の請求で特例を使えます(国税庁 No.4208)。未分割の場合の細かい手続きは、別途確認してください。

相続登記の期限は、税の期限とは別の話です。登記側は相続登記の期限の数え方と相続人申告登記で、相続直後の全体の流れは実家を相続したら最初にやること5つで確認できます。

税理士に相談しなくてよい人、したほうがよい人

概算した合計が基礎控除を大きく下回り、特例も使う必要がない方は、申告が不要の可能性が高く、税理士に頼まなくても済むことがあります。パターンBのような方がこれにあたります。判定コーナーで目安を確認すれば、足りることも多いでしょう。

一方で、次のような方は、早めに税理士に相談する価値があります。

  • 特例なしの合計が基礎控除を超えそうな方
  • 特例が使えるか、別居の子の要件に当てはまるか迷う方
  • 遺産分割がまとまりそうになく、10か月が近づいている方

相談の入り口として税理士を探すのであれば、相続での税理士選びなら税理士ドットコムのような探し方があります。特定の税理士の優劣は、ここでは判断できません。複数の候補を見比べて、相続税の経験や相談のしやすさで選ぶのが現実的です。

よくある質問

相続放棄した人は、法定相続人の数に入りますか?

入ります。基礎控除を計算するときは、放棄がなかったものとして人数を数えます。養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までが対象です(国税庁 No.4152)。

特例を使って評価額が基礎控除以下になれば、申告は不要ですか?

不要にはなりません。申告の要否は、特例を適用しない場合の合計額で判定します。また、特例で税額が0円になっても、特例を使うには申告書での適用の選択が必要です(国税庁 No.4205、No.4124)。

遺産分割が10か月以内にまとまらない場合はどうなりますか?

申告期限は変わらないため、法定相続分で申告します。この申告には特例を適用できませんが、原則として申告期限から3年以内に分割できれば、修正申告や更正の請求で特例を使えます(国税庁 No.4208)。

次の一手

実家の相続で、税金のことまで手が回らなかったのは自然なことです。先送りしてきた自分を責める必要はありません。今日、全部を片づけなくて大丈夫です。

まず、固定資産税の納税通知書を探してください。そこから建物と土地の評価額を拾い、路線価図で土地の概算を出して、国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」で目安を確認します。基礎控除を超えそうなら、税理士に相談します。10か月の期限から逆算して、「いつ判定するか」だけ今日決めてください。

基礎控除を超えそうな方は、相続での税理士選びなら税理士ドットコムから探してみてください。

申告後に実家を売ることも考えている方は、相続税を払った人だけが使える取得費加算との選び方を取得費加算と3,000万円控除の選び方で整理しています。売却の査定を取ってみたい方は、物件の無料売却査定(訪問査定)を申し込むという方法もあります。空き家全般の情報は空き家・実家じまいのトップページにまとめています。

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参考資料