実家が空き家になった最初の1年でやること

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親の家に誰も住まなくなり、鍵を持ったまま何から手をつけていいか分からずにいないでしょうか。何もせず放っておくと、劣化が進んで管理不全空家に指定され、指導を経ても改善しないまま勧告を受けた時点で、固定資産税の住宅用地特例が対象から外れてしまうことがあります。この記事では、相続開始からの最初の1年で押さえておくべきことを時系列で整理します。まだ親が元気で、これから先の話をしておきたい段階の方は、親が元気なうちに実家の話をする記事のほうが参考になります。

この記事の結論

最初の1年は、相続放棄3ヶ月・相続税申告10ヶ月の法定期限を守りつつ、月1回程度の管理で固定資産税の特例を維持することが最優先です。

  • 相続放棄を検討する場合、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります
  • 家が建っている限り固定資産税の住宅用地特例は原則継続しますが、管理不全空家の勧告を受けると対象から外れます
  • 今日やることは、相続開始日をカレンダーで確認し、次の1月1日までの管理担当を決めることだけです

1年間のタイムラインが頭に入ったら、次に必要なのは実家がいまどんな状態で、いくらの価値があるかを把握することです。物件の無料売却査定(訪問査定)を申し込む申し込んだからといって、その場で売却を決める必要はありません。

結論: 最初の1年で最優先すべきこと

最初の1年でやることは、大きく3つに分かれます。1つ目は期限のある手続き(相続放棄・相続税申告・相続登記)、2つ目は固定資産税を上げないための最低限の管理、3つ目は火災保険の継続確認です。

相続開始〜数ヶ月でやること——相続放棄3ヶ月・相続税申告10ヶ月の期限

最初の1年のうち、法律で期限が決まっているのは相続放棄と相続税の申告・納税です。相続放棄は、相続の開始を知った時から3ヶ月以内(熟慮期間)に、家庭裁判所へ申述する必要があります。財産や負債の把握に時間がかかる場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることもできます(裁判所「相続の放棄の申述」「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。相続税がかかる場合は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税を行います(国税庁タックスアンサーNo.4208)。申告期限までに遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分で仮の申告・納税を行い、確定後に更正の請求で還付を受ける方法があります(同上)。あわせて、相続を知った日から3年以内に相続登記も必要です(義務化されており、正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象になります。東京法務局)。共有名義のまま曖昧に終わらせると、次の相続で共有者が増え、揉めやすくなります。詳しくはきょうだい共有名義についての記事で整理しています。

固定資産税・都市計画税の扱い——住宅用地特例を維持するための最低限の管理

固定資産税は毎年1月1日(賦課期日)時点の建物・土地の状態でその年度分が決まるため、相続後最初の1月1日を迎える前に管理の体制を決めておく必要があります。家が建っている土地には住宅用地特例があり、200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は課税標準が価格の6分の1(都市計画税は3分の1)、200㎡を超える部分は3分の1(都市計画税は3分の2)に軽減され、空き家でも原則として継続します。特例が外れるのは、管理不全空家等に指定され、指導を経ても改善が見られず勧告を受けた場合で、課税標準がもとの水準に戻り、土地の税額が実質最大6倍程度になることがあります。負担は大きく変わり得ます(国土交通省 空家法関連情報/大阪市 固定資産税ページ)。管理不全に指定されやすいのは、屋根や外壁の破損、割れたまま施錠されない窓、繁茂した庭木、敷地内のごみの放置など、外から見て手入れされていないと分かる状態です。回避策として月1回程度、換気・通水・庭木の手入れ・郵便物の回収を行う方法が広く使われていますが、この頻度は公的基準ではなく業界慣行の目安です。

空き家の管理——火災保険の継続確認と最低限のメンテナンス

火災保険は、居住用から空き家に用途が変わった時点で、契約している保険会社への通知が必要です。正当な理由なく通知を怠ると、契約解除や保険金が支払われない場合があります(因果関係がない場合を除く。日本損害保険協会 損害保険Q&A 問59)。空き家は保険料率上「一般物件」として扱われ、保険料が割高になったり商品が限られたりする傾向があります。一般物件扱いになると、地震保険を付帯できない点にも注意が必要です(NPO法人空家・空地管理センター)。空き家専用の火災保険商品を扱う会社もあり、たとえばNPO法人空家・空地管理センターは日新火災海上保険と提携し、2024年1月から空き家専用保険を自動付帯するサービスを始めています(同センター、確認できた1社の事例です)。引受可否や保険料は保険会社ごとに異なるため、まずは契約中の保険会社・代理店に空き家になった旨を連絡し、確認することが最初の一歩です。

「そのままにする」以外の選択肢を知っておく

手続きと管理の体制を整えたあと、その先を考える段階が来ます。選択肢は主に4つです。売却するなら、昭和56年5月31日以前に建築された家屋など一定の条件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。詳しくは3,000万円特別控除についての記事で解説しています。貸して活用するなら土地活用として貸す記事、解体するなら解体補助金についての記事を参考にしてください。相続放棄という選択肢も残っており、放棄後の管理義務は相続放棄した場合の空き家管理についての記事で整理しています。全体像を見たい場合は、実家じまい・空き家の記事一覧から探せます。

今日やることは、まず物件の状態と価値を把握すること

ここまでの整理を踏まえると、今日やれることは1つに絞れます。実家がいまどんな状態で、いくらで売れそうかを把握しておくことです。管理を続けるにしても、将来売る・貸す・解体するにしても、物件の価値を知っておけば判断が具体的になります。物件の無料売却査定(訪問査定)を申し込む査定額はあくまで目安であり、実際の売却価格を保証するものではありません。申し込んでもその場で売却を決める必要はありません。すでに持ち続けると決めていて当面売る予定がない場合は、今すぐ査定を受ける必要はなく、前の章で触れた管理体制を優先してください。

よくある質問

実家を相続放棄するかどうかは、いつまでに決めればいいですか?

相続の開始を知った時から原則3ヶ月以内(熟慮期間)に、家庭裁判所へ申述する必要があります。財産や負債の把握に時間がかかる場合は、期限内に家庭裁判所へ期間伸長を申し立てることもできます。判断に迷う場合は早めに司法書士・弁護士に相談してください。

空き家になった実家の固定資産税は必ず上がりますか?

家が建っている限り、住宅用地特例は原則として継続します。上がるのは、管理不全空家に指定され、指導を経ても改善せず勧告を受けた場合です。定期的な管理を続けていれば、税額が上がる事態は避けやすくなります。

誰も住んでいない実家でも火災保険は続けられますか?

続けられる場合が多いですが、居住用から空き家になった時点で保険会社への通知義務があります。一般物件として扱われ、保険料や補償内容が変わることもあるため、まず契約中の保険会社・代理店に空き家になった旨を連絡し、確認してください。

次の一手

実家が空き家になったことも、手続きが後回しになっていることも、あなたの怠慢ではありません。今日、1年分すべてを終わらせる必要はありません。今日やることは1つで足ります。相続開始日をカレンダーで確認し、次の1月1日までに実家を誰がどう管理するかを決めることだけです。相続放棄をするかどうか、いつ税理士や司法書士に相談するかは、そのあとで決めて構いません。「いつ決めるか」だけ、今日決めてください。

管理と活用の選択肢を先に一通り知っておきたい場合は、書籍『実家の「空き家」超有効活用術』も参考になります。

参考資料

  • 裁判所「相続の放棄の申述」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
  • 裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」: https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html
  • 国税庁タックスアンサーNo.4208「相続財産が分割されていないときの申告」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4208.htm
  • 東京法務局(相続登記の義務化): https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000275.html
  • 大阪市「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」(住宅用地特例): https://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000239753.html
  • 国土交通省 空家法関連情報(管理不全空家等): https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
  • 日本損害保険協会 損害保険Q&A 問59: https://soudanguide.sonpo.or.jp/home/q059.html
  • NPO法人空家・空地管理センター(火災保険): https://www.akiya-akichi.or.jp/knowledge/kanri/insurance/

相続税・相続放棄・保険契約の個別の判断は、この記事だけでは行えません。税務は税理士または税務署、法務は司法書士または弁護士、保険は契約中の保険会社・代理店に、それぞれ確認してください。この記事は2026年8月時点で確認できた情報に基づいています。